アトピーとの闘いでは、肉体的な負担だけではなく、精神的な、つまり心の苦しみも非常に大きなものでした。
アトピーの猛烈なかゆみにより、かき潰した肌はえぐれ、ボロボロになり、滲出液も体中から大量にあふれ出てきます。また、強烈な痛みに襲われることもあります。
一日中、体のかゆみから逃げることもできず、さらには肌の痛みやベチャベチャした浸出液の不快感によって、心はいつも疲れ切っていました。
また、これに追い討ちをかけたのが、不眠です。
アトピーとの闘いのなかで、この不眠には相当苦しめられました。
とにかく眠れない。
かゆい、痛い、不快…。
眠れない日々が続けば続くほど、体力的な負担は大きくなり、精神的にもすり減っていきました。
アトピーと同様に、不眠も10年ほど続きました。
この不眠の原因には、アトピーによる上記の直接的な影響のほかに、未来への大きな不安やどうにもできない現状への絶望感からくる心の苦しみもありました。
ある意味では、アトピーによる肉体的な苦しみ以上に、この未来や現状についての苦しみの方が、精神的に大きかったと思います。
毎日毎日、本当に不安でした。
もうアトピーを治すことはできないんだろうか。
これから自分の人生はどうなってしまうのだろう。
そもそも、どうして自分がこんなしんどい思いをしなければならないんだろうか。
世の中から取り残されていく。
こんな自分には、存在する価値がないんだ。
意味のない人生なんだ。
はやく楽になりたい…。
僕の心は、10年のアトピーの苦しみによって崩壊していました。
このような心の苦しみは、不眠をさらに加速させました。
また、なんとか眠ることができたとしても、悪夢にうなされ、寝ながら涙を流していたなんてことも少なくありません。
完全に負のサイクルにハマってしまい、どう足掻いても抜け出すことができませんでした。
僕がアトピーの10年間を一言で表すなら、迷うことなく“地獄”です。
その言葉以外に思いつきません。
僕にとって、まさしく地獄でした。
ただ、そんな地獄の10年間でしたが、僕にはどうしてもあきらめることができないこともありました。
それは『自分の人生』です。
正直、生きることが嫌になったことも何度もありました。
それでも10年間を通して、どうしても自分の人生をあきらめることだけはできませんでした。