アトピーのかゆみは、普通のかゆみではありません。
肌をえぐるほど、かいてもかいてもかゆみは止まりません。
そして、かけばかくほど皮膚はボロボロになり、滲出液(しんしゅつえき)という液体があふれ出ます。
治療といえば、病院からステロイド薬を処方してもらい、皮膚に塗っていきます。
はじめの頃は、かゆみがやわらぎ、効果を実感できるのですが、使い続けるうちにだんだん効かなくなっていきました。
そのため、強力なステロイドを使うようになっていくのですが、やはり使い続ければ、かゆみはさらに強くなっていきました。
また、このステロイド薬は副作用も強く、使い続ければ使い続けるほど、肌はさらに弱ってボロボロになり、かゆみが増してしまいます。
いわゆる薬漬け状態です。
ステロイドを辞めても地獄。使い続けても地獄なのです。
ある年に、ステロイドではどうしたって治らないと考えて、キッパリと使用しないことに決めました。
そして漢方薬を飲みながら、少しずつ治療していくという方法をとりました。
この年は、本当に人生で最も過酷で苦しい一年でした。
半年以上は、外出はおろか自分の部屋から出ることさえも、数回程度しかできませんでした。
体中をかきむしり過ぎて、肌はボロボロに壊れ、滲出液で体ぜんたいが常にドロドロでした。
ろくに動くこともできず、寝たきり状態になりました。
10ヵ月以上かけてステロイドを抜きつつ、なんとか漢方薬も効きはじめ、ようやく無理をしなければ、以前よりも外出できるようになりました。
ただ、その後も漢方は5年ほど続けましたが、それ以上にアトピーが改善することはありませんでした。
他にも、整体を受けたり、アレルギーの専門医を訪ねたりと、どれも数年単位で取り組みましたが、結局、かゆみが消えることはありませんでした。
何年もいろいろな治療をしたけれど、アトピーを治すことはできず、お金と時間だけを使うばかり。
僕だけでなく、家族も苦しい日々を過ごしているのがわかっていましたし、申し訳なくてたまりませんでした。
どんなに治そうと努力しても、アトピーは改善しない。
普通の生活をするには程遠く、かゆみに苦しめられる毎日を送るしかありませんでした。
本当に生きているだけ。
ただ毎日をかゆみと痛みに苦しみ、時間を浪費しているだけという状況でした。
自分の人生にはなんの意味もない。
いったい自分はなぜ生きているのだろう…。
絶望と不安だけの日々でした。
結局、そんな生活を約10年続けることになってしまったのです。